孤高の緊縛師の…とある気まぐれなエゴイズム


[はじめに]本物語はフィクションです。文中に登場する「写真家」と「緊縛師M」はあくまで架空の人物であり、今回撮影を担当してくださった杉浦則夫先生、および縛り手を担当したHIBIKI氏とは一切関係ございません。
「緊縛とは──縛り手と受け手以外の第三者が、本来は介入すべきではない絶対的な聖域(サンクチュアリ)である」
・・・との信条を忠実に堅守し、緊縛道を日夜極めんとする孤高の緊縛師Mは、今日も一筋に愛する女──着物姿の早苗の、いかにも男好きする肢体に縄を滑(すべ)らせる。
だがしかし。今回の緊縛は “いつも” とはいささか・・・いや、相当に勝手が違っていた。
そう。「第三者の介入を許さない」という禁を破(やぶ)り──「今日」にかぎっては、「緊縛」を通じての二人の愛欲の行為を「第三者」である写真家の手を借り・・・カメラに収めてみようと試みたのだ。
己れの緊縛術を第三者的視点から見つめ直す


緊縛師Mにとって、緊縛の様(さま)を自分以外の人間に撮影させるのはもちろんのこと・・・ “現場” に “他人” を立ち入らせるのも、初の「試み」であった。
これまで主体的かつ自立的に行なってきた「緊縛」への探究が、客観的な視点からはどのように映るのか、どういう “絵” を描いているのか・・・を、ここらでいったん相対的に “確認” してみたい、という芸術家ならではのピュアな性(さが)──ある種の「エゴイズム」に抗(あらが)うことができなかったのである。
パステルの着物姿に射す “いつも” とは違った陰影


「今回」の撮影は──「カリスマ」と呼ばれる、この世界ではまごうことなき “第一人者” である写真家に依頼した。
その無口なカリスマ写真家は、最小限のストロボを素早く室内にセッティングしてから、軽く頷(うなず)き、右手のひらを二人に向ける。「さあ、お好きに始めなさい」と。
この日のために準備した淡いパステルカラーの友禅を見事に着付けた早苗を、まずは麻縄で後手高手縛りに・・・。
愛する女の恍惚の表情に──写真家が緻密に計算し尽くしたライティングによって、 “いつも” とは異なった陰影が射(さ)す・・・。
「緊縛」へのリビドーを巧みに掻き立てるシャッター音


静寂した室内にパシャリパシャリというシャッターの音だけがメタフィジックに反響する。
そのメトロノームみたいに規則正しい無機質なリフレインが、心地良く縛り手と受け手のリビドーを厳(おごそ)かに刺激し・・・緊縛の作業を巧(たく)みにフォローしながらも、次第とその存在感は霧散していく。まるで、高僧が唱える優れた読経のように・・・もしくは、厳選した音数だけで上質な独奏曲を、瀟洒(しょうしゃ)な隠れ家的BARでプレイする達者な職業ピアニストのように・・・。
「緊縛」との絶妙なディテールを織りなすうなじに唇を這わせ…


「いつもとは異なった表情に見える愛しい女」を目(ま)の当たりとし、雷(いかずち)のような衝動に打たれた緊縛師Mが、早苗の国宝級の陶器のようなマチエールの・・・唯一無二なうなじへと唇を這(は)わす。
性感帯の一つである部位を責められ、思わず「うっ…」という喘(あえ)ぎ声を漏らす早苗。「カリスマ」は動じる気配がまったくない。ただただ黙々とシャッターを切り続ける。「どうぞご自由に」と言わんばかりに・・・。
緊縛と独善(=サイコパス的思考)に続く
緊縛師 HIBIKI
モデル あぃ
写真 杉浦則夫
HIBIKI X https://x.com/HIBIKINAWA?t=S_e8JNxHmLv73ryFxoa8xA&s=03
あぃ X https://x.com/a1_mii?t=bXMF3c3dR2XEXKR5ooKIJA&s=03
撮影場所 Kスタジオ
東京都新宿区新宿2-15-11信田ビル5階
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