新人SM女王様マリアが六本木No.1を目指して緊縛研修志願［Step6］

「う〜〜〜ん…ウチの看板真性M女に勝るとも劣らない素晴らしい素質の持ち主だ！　どうです…このまま一気に “大技” までイッちゃいます？」
ドレッドヘアで痩せ型の緊縛師が、「紀沙羅」と名乗る女性のほうをチラリと見ながら、そうお伺（うかが）いを立てる。
アイコンタクトによる “合意” が成立したと同時に新人女王様マリアの右脚は緊縛され、じわりじわり天井方向へと吊り上がる。まるで、現役時代の王貞治選手が日本刀での素振りで会得したフラミンゴ（一本足）打法みたいに・・・。

そこからのプロセスはほとんど新人女王様マリアの記憶には残っていない──今、彼女は六本木外れにある閑静な住宅街にポツンと建つSM専用ホテルの一室で、うつ伏せの格好となり宙（ちゅう）に浮いている。
「通常は、初回のM女研修で “吊り” までイクことはないんだけどね…。キミだけは特別ってことで。いわば “英才教育” ってヤツ…？」
薄っすらと汗をかきながらこうつぶやくドレッドヘアで痩せ型の緊縛師が丁寧かつ繊細に──修行僧のごとく縄と格闘するストイックな様（さま）が、新人女王様マリアは愛（いと）おしくて、たまらない・・・。

「 “吊り” はね…誰にだってできる安易な技（わざ）じゃないの。下手したらアナタを死に至らしてしまう、一種の “禁じ手” なの。アナタがリアルタイムに感じているエクスタシスは、圧倒的な技術に裏付けられた緊縛師の “愛” があってこそ、初めて生まれてくるの」
「紀沙羅」と名乗る女性が訥々（とつとつ）と語る “SM論” と、新人女王様マリアが “研修” を通じて提唱できた “仮説” がデジャビュのようにリンクする・・・や否（いな）や、マリアの下半身が頭部の位置よりも高く浮遊する・・・。

正常な思考と切り離され、ぼーっと虚（うつ）ろになっていく新人女王様マリア──しかし、人間とは思えない複雑な角度で手脚を拘束されながらも・・・はしたない沁（し）みが滲（にじ）む股間部が絶妙なアングルで露出されていることだけは、はっきりと確信できた。
マリアの “肉奴隷” と化した痴態を一通り俯瞰（ふかん）したのち・・・「紀沙羅」と名乗る女性は、満足そうに「研修終了」の意を告げてから、 “最後のレクチャー” を始める。

「一回きり…とっても大切なことを言わせてもらいますね。いい？　巷（ちまた）で頻繁に使われている『ドS』だとか『ドM』なんてキーワードは、アタシたちからすればナンセンス以外の何物でもないの。人間の感情は、常にSとMの間（あいだ）を振り子みたいに揺れ動いているの。わかる？　つまりね、M度を90％まで振り切れる人間は、必ずS度も90％まで振り切れるの。逆に、M度を10％しか振り切れない人間は、S度も10％しか振り切ることができない…。いかがかしら？　お利口なアナタなら、ここまでの “説明” だけで、もう今日の “研修” の真意は理解できたでしょ？」
新人女王マリアの(脳を含む)全臓器内で点在していた “不条理” が一本の線として繋がり、みるみるうちに氷解していく──数日後には日本のSM業界に激震を走らせるであろう、新進気鋭の「六本木の女王様」が誕生した瞬間であった。

（了）

緊縛師　HIBIKI
モデル　あぃ
首輪　拘束企画
撮影場所　Alpha-in（アルファイン）

東京都港区東麻布2－8－3

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